多汗症

多汗症とは

多汗症は日常生活に支障があるほどの汗を過剰にかく状態をいいます。
全身性多汗症とわき・手のひら・足の裏・顔など局所に症状がある局所性多汗症があり、原発性多汗症とは、何らかの原因がある続発性と異なり、原因となる異常・病気がなく起こるものをいいます。多くは思春期以降に発症します。
原発性多汗症では、精神的緊張により多くの発汗があります。症状が重くなると汗がしたたり落ちたり、手足は常に濡れているため、指先が冷たく、紫色を呈することもあります。皮膚が湿った状態が続くと、カビなどの感染症が起きやすくなります。発汗は日中に多く、夜間にはおさまります。
腋窩多汗症では、左右両側にシャツにしみが出来たり、手や足の多感を伴うことがあります。それに伴い患者さんは様々な苦痛を伴います。勉強や仕事に対する悪い影響、対人関係の支障をきたし、さらにはうつ病を合併することもあります。幼児期から思春期にかけて発症し、20~30代に比較的多く見られ、患者さんが多いにもかかわらず、医療機関への受診が少ないのがこの病気の特徴です。

原発性腋窩多汗症

「ワキ汗」のことを正式には原発性多汗症といいます。 これは原因となる病気や異常がないにもかかわらず、日常生活に支障をきたす程の多量のワキ汗に悩まされる状態です。多汗症の原因は、さまざまです。遺伝的要因、神経の異常、病気、ストレス、特定の薬剤の副作用などが考えられます。また、特定の食品や飲料、アルコールやカフェインなどの刺激物が、多汗症の症状を引き起こすこともあります。
日本人の10人に1人は多汗症であり、そのうち約60%が原発性腋窩多汗症です。しかしこの病気の受診率は4.4%と低いのが現状です。男女比は女性が男性の1.7倍高くなっており、社会生活が活発な20~30代の有病率が高いことが特徴です。原発性腋窩多汗症は以下の基準によって診断されます。

Hornbergerらの診断基準

局所的に過剰な発汗が明らかな原因がないまま6ヶ月以上認められ、以下の2項目以上があてはまる場合を多汗症と診断します。
① 最初に症状が出るのが発汗が25歳以下であること
② 左右両方で同じように発汗がみられること
③ 睡眠中は発汗が止まっていること
④ 1週間に1回以上多汗の症状が出ること
⑤ 同じ症状の家族がいること
⑥ ワキ汗によって日常生活に支障をきたすこと

原発性局所多汗症の重症度はStruttonらが自覚症状によって以下の4つに分類した
HDSS (Hyperhidrosis disease severity scale)によって判定されます。
① 発汗は全く気にならず、日常生活に全く支障がない
② 発汗は我慢できるが、日常生活に時々支障がある
③ 発汗はほとんど我慢できず、日常生活に頻繁に支障がある
④ 発汗はがまんできず、日常生活に常に支障がある

腋臭症(ワキガ)とは

ワキガは正式には腋臭症といい、ワキの下から悪臭を放つ状態を言います。
欧米人で比較的多くみられるのに対し、日本人などの黄色人種では10%程度の人にみられます。汗腺にはエクリン腺とアポクリン腺の2種類があり、ワキガの原因はアポクリン腺の分泌が亢進することによります。アポクリン腺はわき以外に鼻、外陰部、乳輪などの毛穴に存在し、汗の中の脂質・タンパク質が分解され独特の臭いを生じると言われています。

治療法

  • 内服(プロ・バンサイン)
  • 外用(エクロックゲル、ラピフォートワイプ)
  • イオントフォレーシス

外用剤

エクロックゲル5%

当院では原発性多汗症の治療薬、エクロックゲル5%(科研製薬)の処方を行っております。
エクロックゲル5%は日本で初めて健康保険の適応が認められた原発性腋窩多汗症の塗り薬です。エクリン汗腺が交感神経から伝えられる汗を出す指令を受け取れないようにブロックすることにより、発汗を抑えることが期待できます。エクリン汗腺とは、皮膚の中にある汗をつくる器官のひとつで、主に体温調節のために、水分の多い汗を分泌します。多汗症の症状である多量の汗は主にエクリン汗腺から出ています。

以下のような症状があらわれたら、使用をやめて、すぐに医師の診察を受けてください。

  • 皮膚炎や紅斑、かゆみ、湿疹、あせも
  • 口の渇き
  • 尿が出にくい、尿が近い
  • 光をまぶしく感じる       など

緑内障や前立腺肥大症の方、わきに傷や湿疹・皮膚炎などがある方、妊娠中や授乳中の方は、あらかじめ医師・薬剤師に伝えてください。そのほか、気になる症状があらわれたときは、医師にご相談ください。

  • 使用上の注意

    わきの水気をタオルなどで よく拭き取り後、薬液をわき全体に塗り広げてください。 *薬液を塗った後、わきが乾くまでは寝具や衣服が触れないように注意してください

    緑内障や前立腺肥大症の方、わきに傷や湿疹・皮膚炎などがある方、妊娠中や授乳中の方は、あらかじめ医師・薬剤師に伝えてください。

    以下のような症状があらわれたら、使用をやめて、すぐに医師の診察を受けてください。 皮膚炎や紅斑、かゆみ、湿疹、あせも、口の渇き、尿が出にくい、尿が近い、 光をまぶしく感じる など そのほか、気になる症状があらわれたときは、医師にご相談ください。

  • その他の使用・保管上の注意

    • 薬液を手を使ってわきに塗らないでください。
    • 薬液が手についたら、すぐに洗い流してください。
    • 薬液を塗る範囲に傷や湿疹、皮膚炎がある場合は医師に相談してください。
    • 薬液のついた手で顔をさわったり、目に入れたりしないよう注意し、万一目に入った場合は、すぐに水またはぬるま湯で洗い流してください。
      直射日光、火気を避けて室温で使用、保管してください。

ラピフォートワイプ

当院では原発性多汗症の治療薬、ラピフォートワイプ(マルホ)の処方を行っております。
ラピフォートワイプは、多汗症の治療に使用される外用薬で、グリコピロニウムトシル酸塩水和物という成分が含まれています。グリコピロニウムトシル酸塩は、ムスカリン受容体に作用して、汗腺の刺激を抑制することで、多汗症の症状を改善する作用があります。
ラピフォートワイプは、特に軽度から中等度の多汗症の治療に有効とされています。使用方法としては、汗をかきやすい部位に、1枚のワイプを塗布することで、汗の分泌を抑制することができます。効果は約8時間持続するとされています。1枚のワイプに適量の薬液が含まれており、1回の使用量は1枚です。1日に使用できる回数は、医師の指示に従って使用することが望ましいです。
ラピフォートワイプの副作用としては、皮膚のかゆみ、赤み、かぶれなどが報告されています。また、使用中にアレルギー症状が現れた場合は、使用を中止して医師に相談する必要があります。
ラピフォートワイプは、医療用医薬品であり、医療機関の処方箋が必要となります。自己判断で使用することは避けましょう。また効果や副作用については個人差があるため、医師の指示に従って正しく使用することが重要です。

内服薬

プロ・バンサイン

プロ・バンサイン錠は、多汗症の治療に使用される内服薬で、プロパンテリン臭化物という成分が含まれています。プロパンテリン臭化物は、ムスカリン受容体に作用して、汗腺の刺激を抑制することで、多汗症の症状を改善する作用があります。
プロ・バンサイン錠は、1日3回、食後に水で服用することが一般的です。医師によっては、1日2回の投与量で十分な場合もあります。治療効果の現れ方には個人差があるため、治療開始から2〜4週間程度経過しても効果が現れない場合は、医師に相談する必要があります。
プロ・バンサイン錠の副作用としては、プロバ口の渇きや便秘、頭痛、めまいなどが報告されています。また、使用中にアレルギー症状が現れた場合は、使用を中止して医師に相談する必要があります。
プロ・バンサイン錠は、医師の処方箋が必要となる医療用医薬品であり、自己判断で使用することは避けるべきです。また、医師の指示に従って正しく使用することが重要です。

イオントフォレーシス

イオントフォレーシスは、多汗症の治療に使用される非侵襲的な治療法の一つです。イオントフォレーシスは、電気的な力を使って、皮膚の表面に塩化物イオンを送り込み、汗腺の働きを抑制することで多汗症を治療します。
イオントフォレーシスの治療法は、患者が手足を水の入った槽に入れ、電気的な刺激を与えることによって行われます。この刺激により、汗腺の働きを抑制することができます。一般的には、治療の前に局所麻酔剤や鎮痛剤を使用することがあります。また、イオントフォレーシスは数回の治療が必要な場合があります。
イオントフォレーシスの治療法は、一般的には安全であり、副作用は軽微です。治療中には、皮膚の炎症やかぶれが起こることがありますが、これらは通常、治療後に数日で解消します。ただし、イオントフォレーシスを受ける前に、医師に相談し、適切な治療法を選択することが重要です。

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