皮膚そう痒症とは
「皮膚そう痒症」とは、皮膚に発疹がないにもかかわらずかゆみを伴う皮膚疾患の総称です。単なる「かゆみ」ではなく、持続的な強いかゆみによって、日常生活に支障をきたすほど深刻な状態を指します。また、かゆみはからだ中のいたるところに生じ、体温の上昇をきっかけに悪化しやすいことが知られています。皮膚そう痒症は、肌の一部がかゆくなる限局性と、全身がかゆくなる全身性の2つに分けられます。
皮膚瘙痒症の原因
皮膚瘙痒症の原因には大きく分けて、「皮膚の乾燥によって起こるかゆみ」「内蔵の異常で起こるかゆみ」「服用している薬によって起こるかゆみ」の3種類があります。

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皮膚の乾燥によって起こるかゆみ
皮膚の乾燥によって起こるかゆみは、皮膚のバリア機能の低下が主要な原因です。皮膚のバリア機能とは、皮膚の表面にある角層が、水分を保持し、外部からの刺激から皮膚を守る機能のことです。この機能が低下すると、皮膚から水分が蒸散しやすくなり、乾燥状態になります。
バリア機能の低下を引き起こす要因として、以下のものが挙げられます。-
・アトピー性皮膚炎
最も頻度の高い皮膚そう痒症の原因の一つです。遺伝的素因と環境要因の相互作用によって引き起こされ、皮膚の乾燥、炎症、強い痒みを特徴とします。アレルゲン(ハウスダスト、花粉など)や刺激物への接触が症状を悪化させることがあります。
アトピー性皮膚炎について詳しくはコチラ -
・加齢
加齢に伴い、皮膚の水分保持能力が低下し、皮脂の分泌も減少するため、乾燥しやすくなります。特に高齢者ではかゆみを発症しやすくなります。
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・乾燥した環境
乾燥した空気や、エアコンの風が直接当たる環境は、皮膚の水分を奪い、乾燥を悪化させます。冬場や乾燥した地域では、かゆみを発症しやすくなり、川崎市武蔵小杉にある当院にも冬場は多くの乾燥によるかゆみでお悩みの患者さまが来院されます。
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・長時間の入浴
長時間、熱いお湯で入浴すると、皮膚の皮脂が洗い流され、乾燥しやすくなります。
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・石鹸の使用
アルカリ性の強い石鹸は、皮膚の皮脂を洗い流し、乾燥を招きます。
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内蔵の異常で起こるかゆみ
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・肝疾患
肝臓は、胆汁酸の代謝に重要な役割を果たしています。肝機能障害によって胆汁酸の代謝が異常になると、血液中の胆汁酸濃度が上昇し、かゆみが生じることがあります。これは「胆汁うっ滞性掻痒症」と呼ばれ、全身性のかゆみ、特に手のひらや足の裏のかゆみが特徴的です。肝硬変や胆管閉塞などの肝疾患が原因となることが多いです。
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・腎疾患
腎不全になると、尿毒素が体内に蓄積します。この尿毒素は、かゆみの原因物質の一つと考えられています。尿毒症性掻痒症は、全身性のかゆみを呈し、掻きむしることで皮膚に二次的な変化(乾燥、苔癬化など)が現れることもあります。慢性腎臓病の進行に伴って症状が悪化することが多く、透析療法が必要となるケースもあります。
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・甲状腺疾患
甲状腺機能低下症では、皮膚の乾燥やかゆみが起こることがあります。これは、甲状腺ホルモンの減少によって皮膚の代謝が低下し、乾燥しやすくなるためと考えられています。一方、甲状腺機能亢進症では、皮膚の湿疹や発疹、かゆみなどがみられることがあります。
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・血液疾患
白血病や悪性リンパ腫などの血液疾患では、血液中の様々な成分の異常によってかゆみが生じることがあります。皮膚の症状は多様であり、かゆみの程度も様々です。
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・その他の疾患
糖尿病、貧血、悪性腫瘍など、他の内臓疾患もかゆみの原因となる可能性があります。特に、悪性腫瘍では、腫瘍の場所や種類によって様々な皮膚症状が現れます。
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服用している薬によって起こるかゆみ
飲んだり注射したりした薬や塗り薬によって、かゆみが起きることがあります。これらは薬疹といい、多くは薬物に対するアレルギー反応と考えられています。
皮膚瘙痒症の治療
原因として一番多い乾燥による皮膚瘙痒症に対しては、保湿ケアが中心となります。
川崎市武蔵小杉にある当院では、以下による治療やスキンケアをおすすめしています。
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・保湿剤の使用
保湿成分を多く含むクリームやローションを使用することで、皮膚の水分を保持し、乾燥を防ぎます。ヘパリン類似物質、セラミド、ヒアルロン酸、グリセリンなどが含まれた保湿剤が有効です。
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・入浴方法の改善
短時間、ぬるめのお湯で入浴し、洗いすぎないようにします。入浴後は、すぐに保湿剤を塗布します。
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・刺激の少ない石鹸の使用
刺激の少ない、弱酸性の石鹸を使用するか、石鹸を使わずに洗い流すようにします。
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・適切な服装
刺激の少ない、綿素材の衣類を着用します。ウールや化学繊維の衣類は、皮膚への刺激となる可能性があります。
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・環境の改善
乾燥した環境は避けるようにします。加湿器を使用するなど、湿度を調整することが重要です。
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・薬物療法
ステロイド外用薬や、抗ヒスタミン薬を使用することもあります。