アトピー性皮膚炎とは

アトピー性皮膚炎は、かゆみと炎症(湿疹)を伴う慢性的な皮膚疾患で、特にアレルギーを起こしやすい体質の人や皮膚のバリア機能が弱い人に多く見られます。
遺伝的な要因が大きく、家族内にアトピー性皮膚炎、ぜんそく、慢性じんましん、アレルギー性鼻炎やアレルギー性結膜炎を有する人が多いです。
近年では、成人後も続いたり、急に症状が出る場合も増えています。
アトピー性皮膚炎の特徴
・左右対称に症状が現れる
・顔、首、肘の内側、膝の裏など、皮膚の薄い部分に症状が出やすい
・強いかゆみを伴い、掻き壊すことで悪化しやすくなる
・赤み、湿疹、乾燥、皮膚の肥厚など、様々な症状が現れる
アトピー性皮膚炎の原因
主な原因として大きく2つ考えられます。
- 遺伝的要因(アトピー素因):親のアトピー性皮膚炎を受け継いだ場合、アレルギーを起こしやすい体質になることがあります。家族歴が重要な要素となり、特にアレルギー疾患の既往がある場合はリスクが高まります。
- 皮膚のバリア機能の低下:皮膚の角質層の油の膜が不足し、乾燥肌となり、外からの刺激に反応して皮膚炎を起こしやすくなります。皮膚のバリア機能には、皮脂膜、角質細胞間脂質、天然保湿因子などが含まれ、これらの機能が低下することで症状が悪化します。
バリア機能を悪化させる要因として以下のものがあります。
子どもの場合 | 食べ物の原因が多い。 卵(特に白身) 乳製品 大豆(豆腐、納豆など) 小麦(うどん、パンなど) 米 カニ・エビ 蕎麦 など |
大人の場合 | 食べ物より、環境が原因になることが多い。 ダニ ハウスダスト カビ 細菌 花粉 ペット etc |
アトピー性皮膚炎の主な治療法
原因となる悪化要因の特定とその除去
血液検査やパッチテスト、皮内テストを行い、原因となるアレルゲンを特定し、除去します。そして、原因として特定された食品であれば、口にせず、環境の中にあるものなら、できるだけ接触しないような生活をおくることが、アトピーを悪化させないことへ繋がっていきます。
ストレスケア
規則正しい生活、バランスの良い食事、十分な睡眠時間の確保、適度なアルコール・たばこ、人間関係や仕事・学校での悩みを相談できる人を見つけることが重要です。
スキンケア
毎日シャワーや入浴を行い、石けんを使って体をやさしく洗い、十分に洗い流します。汗をかいたあともシャワーで洗い流すと効果的です。シャワー後に保湿を行うことが大切で、保湿剤には水分喪失を防ぐものと水分保持を助けるものの二種類があります。皮膚に保護膜を作り、水分蒸発を防ぐ保湿剤として、ワセリンが代表的です。ワセリンは脂質成分を豊富に含み、肌表面をしっかりと覆います。一方、ヘパリン類似物質は、皮膚内部の水分保持力を高める効果に優れています。ローションやフォームなど様々な剤形があり、用途によって使い分けると効果的です。
塗り薬の使用
皮膚の炎症を抑えるためにステロイド外用薬が中心となります。医師の指示通り使用することが重要です。
内服薬の使用
抗アレルギー薬や抗ヒスタミン薬が処方され、かゆみを抑える目的で使用されます。症状が強い場合には、ステロイドや免疫抑制の内服薬も使用されることがあります。
新規薬剤の使用
アトピー性皮膚炎治療において、近年、例えばデュピクセント(デュピルマブ)などの生物学的製剤やコレクチム軟膏(デルゴシチニブ)、オルミエント(バリシチニブ)、リンヴォック、サイバインコなどのJAK阻害剤といった新たな治療薬が登場し、大きな進歩を見せています。これらの薬剤は、従来の治療で効果が不十分な、中等度から重度のアトピー性皮膚炎患者さんにとって、新たな選択肢となります。当院では、これらの最新治療薬を導入し、患者様一人ひとりの症状やニーズに合わせた最適な治療を提供できるよう努めています。
アトピー性皮膚炎に関するQ&A
- Q.アトピー性皮膚炎の重症度は何を基準に判断されていますか?
- A.皮膚の状態(乾燥、赤み、鱗屑、丘疹、水ぶくれなど)によって重症度を判断します。重症、中等症、軽症、軽微の段階があります。これを「それぞれの皮疹の重症度」としています。 ・重症:高度の腫れやむくみ、瘡蓋、浮腫、丘疹の多発、高度の鱗屑、小さい水ぶくれ、 ただれなど ・中等症:中等度までの赤み、鱗屑、少数の丘疹、ひっかき傷など ・軽傷:乾燥、軽度の赤み、鱗屑など ・軽微:炎症症状が少なく乾燥症状が主体
- Q.ステロイドの塗り薬はどのように使えばよいですか?
- A.ステロイド外用薬は、塗る場所・量・期間によって副作用を引き起こす可能性があるため、自己判断はせずに医師の指示通り使用することが重要です。
- Q.治療はいつまで続きますか?
- A.アトピー性皮膚炎は短期間で完全に治すことはできませんが、適切な処置と対応をすることで皮膚の炎症が少しずつ良くなり、症状が落ち着いた状態を維持することができます。 定期的に病院に通い、皮膚の状態をチェックすることが推奨されます。